当会は、道場規約として「あらゆるハラスメント行為を禁ずる」ことを明記しています。
あまり目に留まるものではありませんので、ここに取りあげてみたいと思います。
(1)「ハラスメント」を取り巻く現状
昨今、ハラスメント行為に対する告発があらゆる現場で相次いでいます。そして、ハラスメントに関する知識や告発の実例報道が人々の間に広まるにつれて、「ハラスメントの禁止」は常識となりつつあります。ですが、目立たないところで発生する「ハラスメント」は、身近な、至る所に存在しています。
先日、IT事業を行う「パナソニックコネクト」が、1回でもセクハラを行った社員を、即降格とする制度を導入しました(2023/2/20:時事通信)。そうした企業がある一方で、職場でのハラスメントに対して、会社側の82%が対応しなかったという調査結果もあります(2023/1/19:中日新聞・夕刊)。
私(当会の主宰)自身、ある職場においてハラスメント事案に関わり、とても嫌な経験をしました(もちろん、加害側ではありません)。当会の「あらゆるハラスメント行為を禁ずる」という規約は、私自身の苦い経験から生まれたものでもあります。
(2)「個人の倫理観」では、ハラスメントの発生を防止できない
私が経験から学んだのは、「個人の倫理観」などという曖昧なものではハラスメントの発生を防げない、という事実でした。
「個人の倫理観」にはばらつきがあります。
誰が判断しても一発アウトのセクハラ行為を、複数人に対して長期にわたって行った人がいました。その人は、「自分にとってはスキンシップであって、性的な意味はない。だから無罪」と言いました。その人は、組織における現場の責任者でした。(実話)
「ハラスメント行為を許さない」という態度を「組織」として明確にしなければ、組織のメンバーにそうした意識は醸成されません。また、実際にハラスメント事案が発生したときに、その行為への対処が遅れるとともに、その対処も甘いものとなりかねません。
(3)合気道とハラスメント
合気道の道場も「組織」の一形態です。人が集まれば、ハラスメントの発生も十分に考えられます。
合気道の道場は「趣味」の場です。生計に関わる「職場」とは異なり、その場を気に入らなければ、通うことを簡単にやめられます。
ですが、合気道が好きで、当会の稽古環境を気に入ってくれた人に、「ハラスメント行為があるので行きたくない」と思われるのは、主催者としてとても残念なことです。そのため、「ハラスメント禁止」は、どうしても道場規約に入れたい項目でした(主催者としての自戒も込めて)。
以下に、当会の道場規約を掲載します。
また、当会は「道場規約」と併せて、より良い稽古を行うための「内規*」を掲げています。当会の稽古に興味をお持ちの方は、ぜひご一読ください。
(参考)合気道至心会 - 道場規約(内規1) -
- 本規約は、道場⽣の稽古環境の維持・向上を⽬的として定める
- 本規約は、道場の状況等に応じて改定を⾏う。なお、改定の基準は、規約1に従うこととする
- 道場では思想信条の⾃由が保障される。また、稽古は宗教的でなく哲学的に⾏うことを原則とする
- ただし、特定の宗教・思想・商品等の布教・普及・勧誘等を⽬的とした⼊会や、入会後のこれらに該当する行為は禁ずる
- 道場でのあらゆるハラスメント⾏為を禁ずる
- 規約4・5は、あらゆる道場⽣が安⼼して稽古に参加できる環境の維持を⽬的として定める
- 規約4・5に該当する⾏為の報告を受けた場合は事実確認を行い、その行為が悪質であると判断される場合には退会処分となる。なおその判断は、他道場⽣の安⼼した稽古への参加を阻害したかどうかを基準とする
(参照:⊕合気道至心会「道場内規」)
*当会の「内規」は、私の師匠である多田先生(合気会本部師範, 9段)の「道場心得」を基礎としています。
(参照:⊕多田先生のホームページ内「道場心得」, 最終閲覧:2023/4/14)